所有者不明土地関連法の概要

所有者不明土地関連法とは

  • 所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し
    • ここでいう「民事基本法制」を便宜「所有者不明土地関連法」と呼んでいる。民法、不動産登記法、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律などが含まれる。

土地利用の円滑化(民法の改正による)

民法改正:令和5年(2023年)4月1日施行

  • 財産管理制度の見直し(所有者不明土地管理制度、管理不全土地管理制度等の創設など)
    • 不在者財産管理人や相続財産管理人のように人単位での管理人ではなく、土地・建物ごとの管理人制度を創設
  • 共有制度の見直し
    • 不明共有者がいても共有物件の利用処分を可能に
  • 相続制度の見直し
    • 相続開始から10経過後の遺産分割においては具体的相続分を考慮しない等簡素化
  • 相隣関係規定の見直し
    • 隣地所有者不明状態でもライフラインの設置等を可能に


所有者不明土地の「発生予防」①(不動産登記法の改正による)

不動産登記法改正:令和5年(2023年)4月1日施行分

  • 相続人に対する遺贈の登記は全て単独申請可(新不登法63Ⅲ)
  • 買戻権の単独抹消(新不登法69の2)
  • 存続期間等が満了した地上権等の調査義務の軽減(現地調査不要)(新不登法70Ⅱ)
  • 清算人不明の解散30年超法人につき、被担保債権30年超の休眠担保権を単独抹消(新不登法70の2)
  • 登記簿附属書類の閲覧要件を「利害関係」から「正当な理由」に変更(新不登法121)

など


不動産登記法改正:令和6年(2024年)4月1日施行分

  • 相続登記の義務化(新不登法76の2)
    • 相続人が取得を知った日から3年以内に相続登記の申請まで(正当な理由がない場合は過料、新不登法164)
  • 相続登記手続きの負担軽減措置
    • 相続人である旨の申出制度(新不登法76の3)
      • 相続人が登記名義人の法定相続人である旨を申出ることで、相続登記申請義務を     履行したことにできるというもの(単独申出可、非課税、添付書面も簡略化)
      • 申出がなされると、登記官が申出人の氏名住所を職権で登記する(持分は登記さ     れない報告的登記)
  • 登録免許税の負担軽減
    • 軽減税率の適用対象の拡大(死亡者名義への相続登記非課税の期限延長、市街化区域外の非課税対象土地を10万円以下から100万円以下へ拡大+期限延長(R4.4.1~R7.3.31まで)
    • 改正不登法による新たな職権登記(相続人申告登記、住所等変更登記、死亡登記等)は非課税


不動産登記法改正:施行日未定

  • 登記官の職権登記の拡大
    • 死亡等(権利能力不存在)の公示登記(新不登法76の4)
  • 氏名・名称、住所変更登記の義務化(新不登法76の5)
    • 変更日から2年以内の変更登記申請を義務化(正当な理由がない場合は過料、新不登法164)
    • 登記官による職権変更登記(新不登法76の6)
    • 所有権登記名義人が自然人の場合は、申出がある場合のみ職権変更登記が可能(新不登法76の6但)
    • 登録免許税非課税
  • 所有不動産記録証明制度(新不登法119の2)
    • 法務局における登記記録の名寄せのようなもの。証明書の形で発行。

  


所有者不明土地の「発生予防」② (相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律)

新法:令和5年(2023年)4月27日施行、略称:相続土地国庫帰属法

  • 相続土地国庫帰属制度の創設
  • 一定の要件(法務大臣が審査)を満たし、かつ、審査手数料及び10年分の土地管理費相当額の負担金を納付すれば、国庫帰属できる
    • 要件 相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地を取得した者
    • 要件 通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する以下のよう       な土地に該当しないこと
      • ア 建物や通常の管理又は処分を阻害する工作物等がある土地
      • イ 土壌汚染や埋設物がある土地
      • ウ 崖がある土地
      • エ 権利関係に争いがある土地
      • オ 担保権等が設定されている土地
      • カ 通路など他人によって使用される土地 など