裁判所発行の印鑑証明書は不動産登記手続きで使用できるのか?

裁判所が発行する印鑑証明書は、不動産登記令16Ⅱ(申請書)、18Ⅱ(委任状)、19Ⅱ(承諾書)により添付が必要となる印鑑証明書(市区町村長作成)の例外として代わりに添付することが可能か?
=裁判所が発行する印鑑証明書は、不動産登記規則48Ⅰ③、49Ⅱ③、50Ⅱ(→48Ⅰ③準用)に規定する、
【要件1】裁判所によって選任された者がその職務上行う申請の申請書・委任状・承諾書に押印した印鑑に関する証明書
であって、
【要件2】裁判所書記官が最高裁判所規則で定めるところにより作成したもの
に該当するのか?

破産管財人の場合

要件1、2ともに該当する。(破産規則23④)
条文通りであり、市区町村長作成の印鑑証明書の代わりに添付することが可能。


相続財産管理人・不在者財産管理人の場合

要件1は該当する。
要件2は該当しない。家庭裁判所が旧・家事審判規則12Ⅱ(※)の「事件に関する証明」事務の一環として証明書を発行しているに過ぎない(登記研究709号199頁カウンター相談179)。
ただし、登記官の判断により個別のケースごとに受理される場合があるため、要登記相談。

なお、鳥取地方法務局米子支局では、上記登記研究のような見解があるので、事前に相談しておけば、裁判所発行の印鑑証明書を添付可能とのこと(R3.6.1登記相談)。

※現・家事事件手続法47Ⅰ・Ⅵと思われる。
※R5.4.1以降,相続財産「清算人」についても取扱いに変更はないと思われる。


裁判所に選任された遺言執行者の場合

要件1は該当する。
要件2は該当しない。

→結論:使用不可。

【R3.6.1登記相談@鳥取地方法務局米子支局】
Q.裁判所に選任された遺言執行者の場合、相続財産管理人・不在者財産管理人の場合(登記研究709号199頁カウンター相談179)と形式的に異なるところはないため、裁判所が発行した遺言執行者の印鑑証明書を登記申請に添付可能と考えるが、いかがか?

A.使用することはできない。
理由1:登記研究で触れられているのは、相続財産管理人・不在者財産管理人についてであって、遺言執行者には触れられていない。登記研究の内容は、条文の拡大解釈であり、それを当庁のみの判断でさらに拡大解釈することはできない。
理由2:他県の家庭裁判所に確認したところ、遺言執行者のために印鑑証明書を発行しておらず、そもそも事務が定着していない。遺言執行者の印鑑証明書の発行は鳥取家庭裁判所米子支部が、法務局で登記申請に使用できる旨の内諾を条件に発行する、という特別な取扱いを認めたに過ぎず、一般的な登記事務の取扱いとして採用できない。




弁護士会や司法書士会が発行した印鑑証明書(職印証明書)は不動産登記手続きに使用できるのか?

いまのところ、根拠がないため使用できないものと思われる。




遺産分割協議書に添付する印鑑証明書の場合

所有権移転登記に添付する遺産分割協議書に押印された印影については、通達により、印鑑証明書を添付することとされている(昭和30年4月23日民甲742号)。
これは、不動産登記令16、18、19条等が印鑑証明書の添付を明確に規定しているものとは根拠を異にする。
これについて、添付すべき印鑑証明書の種類については言及されておらず、単に「相続を証する書面の一部として右の協議書又は証明書に押印された印鑑の証明書を添付せしめるのが相当」とされているに過ぎないため、どのような印鑑証明書であれば遺産分割協議書の添付書類として使用できるのかについて疑義が生じる。

→今のところ、上記法令上の印鑑証明書の添付の可否と同じ取扱いで運用されているものと思われる。